フェルメール絵画の芸術と全作品解説!切り絵作家が作る無料図案付き

「光の魔術師」と呼ばれ、世界中の人々を魅了し続ける画家、ヨハネス・フェルメール。

美術館で彼の絵画の前に立ったとき、その静謐な空気感や、まるで宝石のような青の美しさに息をのんだ経験がある方も多いのではないでしょうか。

「もっとフェルメールの作品について深く知りたい」 「ただ見るだけでなく、あのアートの世界観を自分の手で再現してみたい」

そんな風に思ったことはありませんか?

こんにちは、何でも切り絵にする切り絵作家のコージーです。

これまでに10年以上、様々なモチーフを切り絵で表現してきましたが、フェルメールの作品ほど「光と影」の計算が緻密で、切り絵ごころをくすぐる芸術はありません。

この記事では、フェルメールの生涯や全作品の解説といった基礎知識はもちろん、現役の切り絵作家だからこそ分かる「構図や配色の凄み」について独自の視点で解説します。

さらに記事の後半では、代表作『真珠の耳飾りの少女』を誰でも作れる切り絵図案にして無料プレゼントします。

読むだけでなく、手を動かしてフェルメールの芸術美を体感してみてください。

目次

そもそも「フェルメール」とは?謎多き画家の生涯と基礎知識

まめ

フェルメールってどんな人なんだろ?

フェルメールの作品を楽しむ前に、彼がどのような時代を生きた人物なのか、その背景を少しだけ紐解いてみましょう。

オランダ黄金時代を生きた「光の魔術師」

ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer, 1632-1675)は、17世紀のオランダ黄金時代を代表する画家です。

レンブラントと並び称される巨匠ですが、その生涯は多くの謎に包まれています。

ヨハネス・フェルメール

彼はオランダのデルフトという街で生まれ、生涯をそこで過ごしました。

当時のオランダは貿易で繁栄し、市民階級が芸術を楽しむ文化が花開いていた時代。

フェルメールは、裕福な市民の日常を、まるで時間を止めたかのような静けさと共に描き出しました。

現存作品はわずか30数点?寡作である理由

フェルメールの最大の特徴の一つが、現存する作品数の少なさです。

現在、真作と認められているのはわずか30数点(35〜37点ほどと言われています)

ピカソが数万点の作品を残したのと比べると、その少なさは際立っています。

彼が寡作(作品数が少ないこと)だった理由は、43歳という若さで亡くなったことや、一つの作品に長い時間をかけて徹底的に描き込んだこと、そして高価な絵の具をふんだんに使ったため注文制作が主だったことなどが挙げられます。

この「希少性」もまた、現代において彼の作品の価値を高める要因となっています。

忘れ去られた天才が「再発見」されるまでの軌跡

実はフェルメール、死後は急速に忘れ去られ、約200年もの間、美術史の表舞台から消えていました。

長い間、他の画家の作品と誤認されていたこともあります。

彼が再び脚光を浴びたのは19世紀半ば

フランスの批評家によって「再発見」され、その卓越した光の表現と色彩感覚が評価されました。

今では世界中の美術館が喉から手が出るほど欲しがる、最も重要な画家の一人となっています。

真珠の耳飾りの少女

なぜ人々は魅了されるのか?フェルメール作品、3つの芸術的特徴

まめ

どんな芸樹的特徴があるのかな?

フェルメールの絵画が、なぜこれほどまでに私たちの心を掴むのか。

その理由は、彼独自の「3つのテクニック」に隠されています。

窓から差し込む「光」の表現とポワンティエ(点綴法)

フェルメールの絵の多くは、画面の左側に窓があり、そこから柔らかな光が差し込んでいます。

彼は光の粒子や反射を表現するために、「ポワンティエ(点綴法・てんていほう)」と呼ばれる技法を使いました。

これは、光が当たって輝く部分に、絵の具で小さな「点」を置いていく手法です。

これにより、パンの質感や布の光沢が、まるでピントの合った写真のようにキラキラと輝いて見えるのです。

宝石を砕いた輝き「フェルメール・ブルー(ラピスラズリ)」

彼の作品を象徴するのが、深く鮮やかな「青」です。

この青は「ウルトラマリン」と呼ばれ、当時は金と同じくらい高価だった宝石「ラピスラズリ」を原料としています。

通常なら宝石として扱う高価な石を砕き、惜しみなく絵の具として使用しました。

時を経ても色褪せないその美しい青は、のちに「フェルメール・ブルー」

と称賛されるようになりました。

まるで写真?「カメラ・オブスキュラ」を用いた構図の秘密

フェルメールの絵は、肉眼で見た景色というよりも、どこか写真的なリアリティがあります。

近年の研究では、彼が「カメラ・オブスキュラ」という光学装置(現代のカメラの原型)を使って下絵を描いていた可能性が高いと言われています。

レンズを通した時に生じる「ボケ味」や極端な遠近感を忠実に模写することで、あの不思議な没入感のある空間を生み出していたのです。

世界が愛する代表作を解説!『絵画芸術』から初期作品まで

フェルメールの作品はどれも素晴らしいですが、ここでは特に有名で、彼の画業を語る上で欠かせない代表作をピックアップして解説します。

静寂の傑作『牛乳を注ぐ女』

(1658-1660年頃 / アムステルダム国立美術館所蔵) おそらく世界で最も有名なフェルメール作品の一つです。

台所に立つ女性が、瓶から牛乳を注ぐという「ごくありふれた日常」が描かれています。

しかし、その静寂な空気感と、牛乳が注がれる一筋の白さ、パンの質感のリアルさは圧巻です。

この絵を見ると、時間が永遠に止まったかのような不思議な感覚に陥ります。

牛乳を注ぐ女

画家が最も大切にした作品『絵画芸術』の寓意

(1666-1668年頃 / ウィーン美術史美術館所蔵) フェルメールが亡くなるまで手元に置き、決して売ろうとしなかったと言われる特別な作品です。

背中を向けた画家(フェルメール自身とも言われます)が、モデルを描いている様子が描かれています。

絵画芸術

モデルの女性は「歴史の女神クリオ」の扮装をしており、背景の大きな地図と共に、「絵画という芸術がいかに歴史に残り、高貴なものであるか」というメッセージ(寓意)が込められているとされています。

彼の技術とプライドが凝縮された、まさに「絵画芸術」の頂点と呼べる一枚です。

故郷への愛を描いた『デルフトの眺望』

(1660-1661年頃 / マウリッツハイス美術館所蔵) フェルメールが生涯を過ごした街、デルフトの風景を描いた珍しい作品です。

空に広がる雲、水面に映る街並み、そして建物の壁に当たる光の粒。

これらが点描のような技法で描かれており、フランスの作家マルセル・プルーストが「世界で最も美しい絵」と絶賛したことでも知られています。

デルフトの眺望

【全作品リスト】制作年代順・所蔵美術館まとめ

フェルメールの作品は制作年が記されていないものが多く、研究によって年代の推定には多少の幅がありますが、おおよそ以下の順序で制作されたと考えられています。

制作年(推定)作品名所蔵美術館(都市)
1654-56年頃聖プラクセディス国立西洋美術館(東京)※帰属に議論あり
1654-55年頃マリアとマルタの家のキリストスコットランド国立美術館(エディンバラ)
1655-56年頃ディアナとニンフたちマウリッツハイス美術館(ハーグ)
1656年取り持ち女アルテ・マイスター絵画館(ドレスデン)
1657年頃眠る女メトロポリタン美術館(ニューヨーク)
1657-59年頃窓辺で手紙を読む女アルテ・マイスター絵画館(ドレスデン)
1657-58年頃小路アムステルダム国立美術館
1658年頃士官と笑う娘フリック・コレクション(ニューヨーク)
1658-60年頃牛乳を注ぐ女アムステルダム国立美術館
1658-60年頃紳士とワインを飲む女ベルリン国立絵画館
1659-60年頃ワイングラスを持つ娘ヘルツォーク・アントン・ウルリッヒ美術館(ブラウンシュヴァイク)
1658-59年頃中断された音楽の稽古フリック・コレクション(ニューヨーク)
1660-61年頃デルフトの眺望マウリッツハイス美術館(ハーグ)
1662-63年頃音楽の稽古ロイヤル・コレクション(ロンドン)
1662-63年頃青衣の女アムステルダム国立美術館
1662-64年頃天秤を持つ女ワシントン・ナショナル・ギャラリー
1662-64年頃水差しを持つ女メトロポリタン美術館(ニューヨーク)
1662-64年頃リュートを調弦する女メトロポリタン美術館(ニューヨーク)
1662-65年頃真珠の首飾りの女ベルリン国立絵画館
1665年頃手紙を書く女ワシントン・ナショナル・ギャラリー
1665-66年頃真珠の耳飾りの少女マウリッツハイス美術館(ハーグ)
1663-66年頃合奏イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館(ボストン)※盗難中
1666-67年頃絵画芸術ウィーン美術史美術館
1666-67年頃婦人と召使フリック・コレクション(ニューヨーク)
1665-67年頃少女の頭部メトロポリタン美術館(ニューヨーク)
1665-66年頃赤い帽子の女ワシントン・ナショナル・ギャラリー
1665-70年頃フルートを持つ女ワシントン・ナショナル・ギャラリー
1668年頃天文学者ルーヴル美術館(パリ)
1669年頃地理学者シュテーデル美術館(フランクフルト)
1669-70年頃レースを編む女ルーヴル美術館(パリ)
1669-70年頃恋文アムステルダム国立美術館
1670年頃手紙を書く婦人と召使アイルランド国立美術館(ダブリン)
1670-72年頃ヴァージナルの前に立つ女ロンドン・ナショナル・ギャラリー
1670-72年頃ヴァージナルの前に座る女ロンドン・ナショナル・ギャラリー
1670-72年頃ギターを弾く女ケンウッド・ハウス(ロンドン)
1671-74年頃信仰の寓意メトロポリタン美術館(ニューヨーク)
1670-72年頃ヴァージナルの前に座る若い女ライデン・コレクション(ニューヨーク)

切り絵作家の視点で読み解く!フェルメールの構図とデザイン

コージー

フェルメールの凄さを感じました。

切り絵図案の作成を通じて、フェルメールの絵を「線」と「面」で分解してみると、ただ鑑賞しているだけでは気づけない、凄まじい計算が見えてきました。

現役作家の視点で、そのデザインの凄みを読み解きます。

徹底的に計算された「消失点」と視線誘導の巧みさ

フェルメールの絵を切り絵にするため、構図を分析していて驚くのが「一点透視図法」の正確さです。

床のタイルの線や窓枠のラインを延長していくと、画面の中の一点(消失点)にピタリと集まります

画面の中には家具やカーテンなど様々なマテリアル(素材)があり、情報量は非常に多いのですが、それらが決して喧嘩していません。

すべての線が複雑さを整理し、自然と「主役(人物の顔や手元)」に鑑賞者の視線が誘導されるように設計されているのです。

この巧みな誘導こそが、彼の絵を見た時に感じる「心地よい没入感」の正体でしょう。

モノクロに変換して初めて気づく「明暗バランス」の凄み

切り絵は「白と黒」の世界ですので、私はよく元絵をモノクロに変換して観察します。

フェルメールの絵をじっと見つめ、切り絵用に最適化するために大胆に明暗の境界線を引いてみると、恐ろしいほど理にかなったバランスになっていることに気づきます。

色という情報がなくなっても、絵としての強度が全く落ちないのです。

光が当たる明るい面と、影になる暗い面。

この対比だけで空間の奥行きや量感を完璧に表現できており、改めて「光の魔術師」の異名は伊達ではないと感じさせられます。

私たちがフェルメールから学べる「引き算の美学」

切り絵は、紙を「切り抜く」アートです。すべての情報を残すことはできないため、情報の取捨選択が必須となります。

実はフェルメールも、この「情報の整理(引き算)」が天才的に上手い画家です。

彼は、見せたい主題を目立たせるために、背景の描き込みや光の当て方を意図的にコントロールしています。

背景にある壁や小物は、存在感を持たせつつも決して主張しすぎず、主役を引き立てるための「名脇役」に徹しています。

この「見せるもの」と「見せなくてもいいもの」を見極める引き算の美学は、私たち切り絵作家にとっても、非常に勉強になるポイントです。

晩年に「切り絵」へ辿り着いたもう一人の巨匠、マティス

フェルメールは緻密な計算と観察で世界を描きましたが、実は「ハサミ」そのものを筆として使い、切り絵を芸術の域まで高めた画家がいるのをご存知でしょうか?

「色彩の魔術師」と呼ばれたアンリ・マティスです。

▼マティスについての解説記事はこちらから

マティス切り絵作品の作り方と特徴~その革新的技法を徹底解説!

【無料図案あり】『真珠の耳飾りの少女』を切り絵で作ってみよう

コージー

実際にフェルメールの絵を切り絵にしてみるよ!

まめ

作るの楽しみだなぁ~

ここからは、実際にフェルメールの芸術を体験するコーナーです。

代表作『真珠の耳飾りの少女』をモチーフにした、初心者の方でも楽しめる切り絵図案をご用意しました。

明暗の対比がカギ!フェルメール作品が「切り絵」に最適な理由

「フェルメールの絵を切り絵にするの?」と驚かれるかもしれません。しかし、実はフェルメール作品と切り絵は非常に相性が良いのです。

その理由は、フェルメールの特徴である「明暗のコントラスト(対比)」にあります

彼の絵は、光が当たっている明るい部分と、影になる暗い部分がはっきりと分かれています。

切り絵もまた「紙を残す部分(陽)」と「切り抜く部分(陰)」のコントラストで表現するアートです。

この共通点があるため、フェルメールの絵は切り絵としてデフォルメ(単純化)しやすく、完成した時に非常に映えるのです。

【ダウンロード】初心者でも切れる『真珠の耳飾りの少女』図案

今回作成したのは、初めての方でも切りやすいように線を調整したオリジナル図案です。

  • サイズ:ポストカードサイズ(ハガキサイズ)
  • 推奨プリント:A4用紙に印刷してご使用ください(余白で固定できます)

【利用規約・注意】

  • この無料図案は、個人での制作・鑑賞・プレゼントなど 非営利目的 に限りご利用いただけます。
  • 作品をSNS等に投稿する場合は、出典として「コージー(cozypaperart.com)」と記載いただけると嬉しいです。
  • 図案や作品を 商用利用(販売・有料ワークショップでの使用など) することはできません。
  • 図案データの再配布、加工しての配布、二次配布は禁止です。
  • 学校や地域サークルなど、非営利のグループ活動で使用する場合は事前にご連絡ください。

写真で解説!切り絵作家が教える作り方 4ステップ

それでは、実際に作っていきましょう。

手順1:プリントした図案を白い紙にテープで固定

まず、ダウンロードしてプリントアウトした図案と、作品の本体となる「白い紙(上質紙や画用紙など)」を重ねます。

白い紙に図案を重ねます。

ズレないように、四隅や余白部分をマスキングテープなどでしっかりと固定してください。

テープ止めします。

手順2:カッティング(光と影の輪郭を切り出す)

図案の線に沿って、上からカッターで切り抜いていきます。

綺麗に仕上げるコツは、「内側の箇所を先に切っていく」こと。

顔のパーツや細かい模様など、中心に近い小さな部分から先に切り抜き、一番外側の輪郭線は最後に切るようにしましょう。

内側の部分からカット

こうすることで、紙の強度が保たれ、最後まで安定して切ることができます。

カットが終わった状態。

手順3:着彩(切った図案に絵の具で色を乗せる)

ここがコージー流のポイントです。切り抜いた白い切り絵に、色を乗せていきます。

私は発色の良い「カラーインク」を使いましたが、一般的な水彩絵の具でも全く問題ありません。

コージーはカラーインクを使います。
筆で塗っていきます。

★プロのコツ フェルメールの重厚な雰囲気を出すために、「濃い色」を意識して塗ってみてください。

今回は、あえて濃淡のある「焦げ茶色(ダークブラウン)」などで着彩し、セピア写真のようなレトロで味わい深い雰囲気に仕上げてみました。

単色でも濃淡をつけるだけで、ぐっと芸術的な作品になります。

手順4:完成(仕上げとチェック)

絵の具がしっかりと乾いたら完成です。

もし水分を含んで紙が少し「へにゃっ」と波打ってしまった場合は、厚手の本などに挟んで一晩プレスし、平らに伸ばしてあげてください。

完成作品を美しく飾るためのポイント

完成した切り絵は、飾り方ひとつで立派なインテリアになります。

  • ポストカードにする:市販のポストカード台紙に貼って、誰かに送ったり壁に貼ったり。
  • アクリルフレームに入れる:100円ショップなどで売っている「両面透明のアクリルフレーム」に挟むと、光を通して影まで楽しめます。
ダイソーで売っている両面透明フレームで飾ってみました。

ぜひ、お好みの方法で飾ってみてください。

付録:道具や材料について

「どんなカッターを使えばいいの?」

「紙は何がおすすめ?」

これから切り絵を始めたい方のために、私が実際に愛用している道具や材料を以下の記事で詳しく紹介しています。

こちらも参考にしてください。

コージー

道具や材料については次のページでしっかり解説しているよ。

まとめ:見るだけでなく「作る」ことで深まるフェルメールの魅力

フェルメールの絵画は、ただ眺めるだけでも十分に美しいですが、その構造を理解し、実際に手を動かして「作る」ことで、画家が見ていた世界を少しだけ追体験することができます。

今回ご紹介した『真珠の耳飾りの少女』の切り絵を通して、光の表現や色の深みをより身近に感じていただければ幸いです。

ぜひ、あなただけのフェルメール作品を完成させてみてください。

コージー

フェルメールの絵を参考にして切り絵を作ってみると、作る作品がぐっと素敵になりますね。それでは次回、またお会いしましょう。