切り絵は、シンプルな紙と刃物から生まれる、奥深い芸術です。
私、コージー・ノア・ダニエルズは切り絵作家として10年の経験をもち、猫や小動物、そして童話のようなファンタジーの世界をテーマにした作品を日々制作しています。

世界中の美術館では、切り絵が民芸や現代アートとして展示され、人々を魅了してきました。
ここでは「切り絵 美術館」という視点から、世界と日本の美術館を掘り下げてご紹介します。
目次
世界の美術館で観る切り絵
切り絵は、日本だけでなく世界各地の美術館でも展示され、人々を魅了してきました。
宗教的な祈りのかたちから祭りの装飾、そして近代アートまで、地域ごとに異なる表情を見せてくれるのが特徴です。
メキシコ
「パペル・ピカド」と呼ばれる切り絵がよく知られています。
メキシコシティのメキシコ民芸品美術館(Museo de Arte Popular)や地域の文化施設で展示され、毎年「死者の日」を彩る欠かせない存在です。
この美術館は、メキシコ各地の伝統工芸や民芸を幅広く紹介する場所で、色鮮やかな布細工や木工品と並んで「パペル・ピカド」が展示されています。

繊細でカラフルな切り紙細工は、風に揺れることで命が吹き込まれるように見え、「空気を飾る芸術」とも呼ばれています。

祭りとアートの境界を越えたその表現は、メキシコ文化の象徴として国内外の来館者を魅了しています。
ポーランド
伝統的な切り絵「ヴィチナンキ」は、ポーランド・ロヴィチにあるウーヴィチ博物館(Muzeum w Łowiczu)などで常設展示されています。
雪の結晶や花をモチーフにした幾何学模様が特徴で、黒一色の緻密な作品から、色紙を重ね合わせた華やかな作品まで、さまざまな表現が楽しめます。

ロヴィチ地方の民芸を象徴するこの切り絵は、農村文化の暮らしや祝祭と深く結びついたアートとして今も大切に受け継がれています。

雪の結晶や花をモチーフにした幾何学模様が特徴で、黒一色の緻密な作品から、重ね合わせた色彩豊かな作品まで、バリエーションに富んでいます。


その規則性と華やかさは、紙のレースとも形容されるほどです。
中国
中国の伝統的な切り絵「剪紙(せんし)」は、北京の中国工芸美術館などで展示されています。

赤い紙を用いて動物や花をモチーフに切り出す作品は、新年の装飾として家庭を彩り、幸福や繁栄を願う意味も込められています。
ユネスコの無形文化遺産にも登録されており、中国文化を代表する工芸として国内外で高く評価されています。
フランス
ニースのマティス美術館(Musée Matisse, Nice)では、アンリ・マティスが晩年に精力的に取り組んだ「切り紙絵(デクパージュ)」の作品が数多く展示されています。

マティスは病気によって絵筆を握ることが困難になった後も創作を続けるため、色紙をハサミで切り抜き、構成して貼り合わせるという独自の技法を確立しました。

この「切り紙絵」は、マティス芸術の新しい到達点として高く評価されています。
美術館には、巨大なスケールの作品《花と果実》をはじめ、マティスのキャリアの集大成ともいえる傑作が収蔵・展示されています。
また、ニース近郊ヴァンスにあるロザリオ礼拝堂のステンドグラスや装飾デザインにも、この切り紙絵の手法が応用されており、晩年のマティス芸術を象徴する存在となっています。


世界の美術館をめぐると、その国の文化や暮らしに根づいた切り絵に出会えます。旅の途中でふらっと立ち寄れば、きっと忘れられない思い出になりますよ。
日本の美術館で楽しむ切り絵

切り絵って、作るだけじゃなくて“観る”のもすごく楽しいよね。美術館に行くと、光や展示の仕方でぜんぜん違った表情が見えるんだ!
富士川・切り絵の森美術館(山梨県身延町)
日本でも数少ない切り絵専門の美術館。

広大な「富士川クラフトパーク」内にあり、常設展と企画展で国内外の作家の作品を鑑賞できます。

切り絵体験教室も定期的に開催されており、観るだけでなく実際に作る楽しさも味わえます。
群馬県・緑の美術館(伊香保)
「切り絵 緑の美術館」とも呼ばれるこの美術館は、切り絵作品を常設展示している日本でも珍しい施設です。

自然豊かな環境のなかで、現代切り絵作家の作品を間近に鑑賞することができます。
展示は、光を取り入れた工夫が随所に見られ、まるでステンドグラスのように輝く切り絵の姿を楽しめるのが魅力です。
館内には体験コーナーも設けられており、来館者がその場で切り絵を作ることもできます。
「観る楽しさ」と「つくる楽しさ」を同時に味わえる、まさに切り絵ファンにとって特別な美術館です。
日本切り絵百景館(群馬県川場村)
「切り絵の世界をあなたに」をテーマに、多彩な切り絵作品を展示。

全国から集まったコンクール作品も紹介されるなど、幅広い作風に触れられます。
無料の体験コーナーもあり、鑑賞と制作を同時に楽しめます。
企画展で切り絵に出会える美術館

常設の美術館もいいけど、企画展って“今だけ”の特別感があるんだよね。どんな作品に出会えるかはその時のお楽しみ!
浜松市美術館(静岡県浜松市)
常設ではありませんが、2024年には「7人のミューズ展 ~日本の切り絵~」が開催されました。

日本を代表する女性切り絵作家7名の作品が一堂に会し、静岡県出身の福井利佐さんによる新作《浜松》は特に注目を集めました。
展覧会期間中には作家によるワークショップやギャラリートークも行われ、観賞と体験の両方を楽しめる場となりました。
その他の地域美術館・ギャラリー
全国各地の美術館やギャラリーで、現代切り絵作家の個展や企画展が開催されています。
例えば季節の行事に合わせたテーマ展や、絵画・工芸とのコラボ展など。
訪れる時期によって思いがけない切り絵作品に出会えるのも、企画展の魅力です。
切り絵を常設で体験できる美術館

作品を観るだけじゃなくて、自分の手で切ってみたら、もっと切り絵の面白さがわかるよ! 美術館でそのまま体験できるなんてワクワクするね!
多くの美術館は展示に重点を置いていますが、以下の施設では「観る」だけではなく、「常設でつくる体験」もできる点で特におすすめです。
伊香保切り絵美術館(群馬県渋川市)
ここでは、入館すれば無料で切り絵体験ができるという気軽さが魅力です。
旅の途中、ふらっと立ち寄って手を動かす楽しさを味わえるのがうれしいポイントです。

富士川・切り絵の森美術館(山梨県身延町)
常設展示を楽しんだ後、美術館の売店で切り絵体験キットを購入して、自宅でも制作にチャレンジできます。
展示作品の世界観を自分の手で再現できる多層的な体験が魅力です。

久保修切り絵ミュージアム(大阪府豊中市)
展示と体験の両方を同じ空間で展開。
予約不要の無料体験から、じっくり学べるワークショップまで、多彩な選択肢が整っているのがうれしいポイントです。

まとめ
- 世界の美術館では、文化や伝統に根ざした切り絵作品が展示され、地域ごとの魅力を体感できる
- 日本の美術館では、切り絵専門館や常設展示で「観る」楽しみをじっくり味わえる
- 常設体験コーナーやワークショップでは、自分の手で「つくる」楽しみも体験できる
- 企画展では、その時だけの特別な作品やイベントに出会えるチャンスがある
- 「切り絵 美術館」という視点で訪れると、鑑賞・体験・出会いの三つの楽しさが広がる

次に旅行するときは、近くの美術館で“切り絵”やってるかチェックしてみようかな!
同じ“紙を切る”という表現でも、国によってこんなに違うなんて面白いよね。旅行先の美術館で切り絵に出会えたら、すごく特別な体験になりそう!